私が撮影に使用する機材を選ぶ基準は、基本的な性能の高さに加えて安定したパフォーマンスと長時間・長期間での使用でもエラーや故障が少ない点を重視している。これはもちろん撮影画像を記録するメモリーカードにも当てはまる基準だ。特にここ数年はデジタルカメラの高画素化および高速連写などの進化が著しいことから、これまで以上にハードな負荷がメモリーカードにかかっていることからも耐久性の高さがより求められている。
今回新たにCFexpress Type Bメモリーカードを導入するにあたり、「DELKIN DEVICES BLACK CFexpress Type B G4」を選択した理由も耐久性の高さを期待してのものであった。実は私のDELKIN DEVICESメモリーカードの使用歴は長く、2007年から「Delkin CF Pro UDMA 305X 16GB」カードを使用し撮影を行ってきた経緯がある。当時はデジタル一眼レフカメラでもまだ1000〜1600万画素クラスの製品が主流であったことから、使用するCFカードも4〜8GB程度のものが一般的であった。そこに新たに登場したのが約2110万画素のキヤノンEOS-1Ds MarkIIIであったのだが、高画素化により記録するデータ量も増えてしまったことから、より大容量なメモリーカードを導入する必要が出てきてしまったのだ。そこで当時いち早く16GBサイズに対応したDelkin CF Pro UDMA 305X 16GBカードを導入することにしたのだ。そのおかげで2000万画素クラスの撮影データであってもカードの容量を心配することなく撮影に集中することができた。さらにその後も、このカードは10年近くエラーや故障もなく使い続けることが出来たことから、耐久性の高さの面でも十分に満足できる製品であったのだ。
実はDELKIN DEVICESでは産業用・工業用メモリーカードも生産しており、これまで多くの企業や研究機関で採用されているという。産業用メモリーカードは、一般的なメモリーカードよりシビアな使用環境や頻繁なデータ書き換えなどでも不具合が出ないことを前提に、極めて高い品質と耐久性が求められる製品だ。これに対応できる技術を有しているメーカーならではのノウハウは、一般的な使用を想定した製品においても活かされているのであろうと考えると、DELKIN DEVICESの製品の耐久性の高さに納得できるのである。
BLACK CFexpress Type B G4の特徴として、最大書き込み速度とは別に、最低持続書き込み速度が明示されている点が挙げられる。最大書き込み速度はそのメモリーが瞬間的に発揮できる最大の速度であり瞬発的なパフォーマンス値を示しているものであるが、それに対し、最低持続書き込み速度はメモリーが安定的に動作可能な平均速度の値となる。多くのメモリカードにおいては、最大書き込み速度のみを表記することで性能を主張することが一般的だが、実際の運用においては最大値よりも安定して動作することが保証されている最低持続書き込み速度の方が重要となる。たとえ瞬発的に高い値を出すことができるメモリーカードであっても、長時間の撮影において速度にムラが出るような性能では安心して撮影を進めることができないからだ。
今回導入したBLACK CFexpress Type B G4 650GBでは、最大書込み速度1,700MB/s・最低持続書込み速度1,560MB/sという値が提示されている。これはCFexpress Type Bに対応したカメラとの組み合わせで使用した場合の数値となる。ただカメラ内での実速度を測定する一般的な方法はないため、ここではMacBook Pro に接続したメモリーカードリーダーを介してデータ転送速度を計測するアプリで実速度を計測した。なおこれら測定値は測定した環境によって変化するので、あくまでも私の環境下での参考値と理解していただきたい。
測定に使用したアプリはフリーソフトの「AmorphousDiskMark 4.0.1」、16GiBのデータを5回書き込み/読み込みを行った測定値の平均値。シーケンシャルアクセスで書き込み878.48MB/s、読み込み922.61 MB/sという数値を示した。
こちらはBlackMagic社が提供する測定アプリ「BlackMagic Disk Speed Test3.4.2」にて測定したもの。書き込み759.2MB/s、読み込み780.9 MB/sという数値となった。なおこのアプリでは動画データの種類ごとに書き込み/読み込みへの対応可否の判別が表示される。今回の結果では4KではProRes422HQ以外が、8KではDCI24までは対応できるとの判定となった。
BLACK CFexpress Type B G4 650GBを富士フイルムX-H2に挿入して実際の撮影に投入した。X-H2はAPS-Cセンサーでありながら約4020万画素となる高解像度機であり、RAW画像1枚でも15MB前後となる。被写体は私が長年撮影を続けているビッグバンドジャズオーケストラのライブ撮影。ステージ上に広がった20人近くのプレイヤーが、曲に合わせパートごとに入れ替わり立ち替わり演奏する姿を、カメラマンはひとりも撮り漏らすことなく撮影を行わなければならない。これを3ステージかけて行うためライブは三時間近くにもおよぶ。その間に撮影した総ショット数はカメラ二台で3000枚を軽く超える。とてもハードな撮影だ。そのうちX-H2で撮影したのはおよそ1800ショット。記録メディア別に自動振り分け対応の2スロットが備えられているので、CFexpress TypeBにはRAWファイル(165GB)を、SDXCカードにはJPEGファイルを同時記録してある。
動きの大きいライブでの撮影はプレイヤーの挙動に合わせて単写・連写を間断なく繰り返しシャッターを切り撮影を行う必要がある。さらに1ファイルのデータ量が大きい高解像度画像を大量に記録することから、カメラの性能のみならず撮影データを記録するメモリーカードの高速記録性能も重要となる。そのため書き込み速度の遅いメモリーカードを使用してしまうと、途中でデータの書き込み待ちが発生してしまい撮影を中断せざるをえない状況となってしまうのだが、BLACK CFexpress Type B G4 650GBを使用しての撮影では、連写を繰り返しても書き込み待ちとなることもなく軽快に撮影を進めることができた。
メモリーカードのパフォーマンスは撮影時のみならず、撮影後に行うパソコンへのデータ転送作業においても大きな影響を及ぼす。メモリーカードのデータ読み込み速度の速さは迅速なワークフローには欠かせない要素だ。BLACK CFexpress Type B G4 650GBでは読み込み速度の実測が922.61 MB/sと速くとてもありがたい。ただしメモリーカードの性能を十分に発揮するためには、高速転送に対応したカードリーダーの使用が必須だ。この「DELKIN DEVICES USB 3.2 CFexpress Type B Card / SD UHS-II メモリーカードリーダー」は高速規格である10Gb/s USB 3.2 Gen 2 Type-Cインターフェイスを採用した製品である。さらにSDXC UHS-II メモリーカードも使用可能なので、これらの規格のメモリーカードを混成して運用する際にはとても便利かつ実用的だ。なおパソコンと接続するUSBケーブルは極力付属のケーブルを使用するようにしたい。ケーブルの品質によって転送速度が大きく変わるため、付属以外のケーブルを使用すると大きく転送速度が低下してしまうことがあるからだ。
このようにBLACK CFexpress Type B G4 650GBを速度測定アプリによる客観的な計測と、実際の撮影現場に投入しての主観的な実感の両面から率直な感想を述べさせていただいた訳だが、高解像度画像の大きなデータ保存とストレスの無い高速な記録速度のどちらにも十分に満足できる結果となった。さらに何よりも重要なデータストレージとしての耐久性および信頼性も、産業用・工業用メモリーカードの生産で培ったDELKIN DEVICESの技術力あってのものだといえる。比較的まだ登場して間もない新しい規格の製品であることから、CFexpressカードはまだまだ高価なものである。それだけに写真家にとって優れたパフォーマンスと信頼性が両立された製品をきちんと見極めて選択することの意味は極めて高いと考える。
礒村浩一
写真家。広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員